「懸垂が1回もできない……」そう悩んでいる方、安心してください。実は、筋トレ未経験の成人男性の多くは懸垂が1回もできないのが普通です。女性であればなおさら難しいのが当たり前です。
懸垂は自分の全体重を腕と背中の力だけで持ち上げる種目で、自重トレーニングの中でも最高難度と言っても過言ではありません。だからこそ、できないことに落ち込む必要はまったくありません。
正しい練習方法をコツコツ続ければ、ほとんどの方が数ヶ月で1回以上できるようになります。この記事では、懸垂ゼロ回から始めて確実にクリアするためのロードマップをステップごとに解説していきます。焦らず一歩一歩、ゆっくり進んでいきましょう。

懸垂で使う筋肉を知っておこう
まず、懸垂でどの筋肉を使っているかを知っておくと、練習の方向性が明確になります。
- 広背筋:メインで使う筋肉。背中の大きな筋肉です
- 上腕二頭筋:腕を曲げる動作で使います
- 大円筋:脇の下あたり。広背筋のサポート役です
- 菱形筋・僧帽筋:肩甲骨を寄せる動作で使います
- 前腕筋群:バーを握る力(グリップ力)に関わります
- 体幹:体のブレを防ぐために使います
つまり懸垂ができないということは、これらの筋肉がまだ十分に発達していないということです。練習法の基本は「これらの筋肉を段階的に鍛えていく」こと。一気にではなく、少しずつ積み重ねていくのが大切です。
ステップ1:ぶら下がり(デッドハング)
目標:30秒以上ぶら下がれるようになる
最初にやるべきは「バーにぶら下がること」です。これができないと懸垂のスタートラインにすら立てません。
やり方:
- バーを肩幅で順手(手の甲が自分を向く)で握る
- 足を地面から離してぶら下がる
- できるだけ長くキープする
- 肩甲骨を少し下げる(耳と肩が離れるイメージ)
- 握力が足りなければリストストラップを使ってもOKです
最初は10秒しかぶら下がれなくても大丈夫です。続けていれば毎回少しずつ時間が伸びていきます。

ステップ2:肩甲骨プル(スキャプラープル)
目標:10回×3セットできるようになる
ぶら下がった状態から、腕を曲げずに肩甲骨だけを下げる練習です。懸垂の「引き始め」の動作で、広背筋を使って体を引き上げる感覚を身につけるための重要なドリルになります。
やり方:
- バーにぶら下がる
- 腕は伸ばしたまま、肩甲骨を「下に引く」
- 体が数cm上がったらOK
- ゆっくり元に戻す
動きは小さいですが、広背筋の活性化に非常に効果的です。地味ですが懸垂攻略に欠かせないステップなので、コツコツ取り組んでいきましょう。
ステップ3:ネガティブ懸垂(最重要)
目標:5秒かけて下ろせるようになる
懸垂練習の中で最も効果的なのがこのネガティブ懸垂です。懸垂攻略の最大のカギと言っても過言ではありません。
やり方:
- ジャンプまたは台を使って、懸垂のトップポジション(顎がバーの上)に行く
- そこからできるだけゆっくり体を下ろす
- 腕が完全に伸びるまで下ろしたら、また台に乗ってトップに戻る
- 最低3秒、できれば5秒以上かけて下ろす
- 重力に逆らいながらゆっくり下ろすことで、筋肉に強い刺激が入る
- 「下ろす動作」は「上げる動作」よりも筋力を発揮しやすいため、懸垂ができない人でも実践できる
回数:3〜5回×3セット(最初は1回でもOKです)
これを週3回、2〜4週間続ければ、多くの方が懸垂1回をクリアできます。
ステップ4:バンドアシスト懸垂
目標:8回×3セットできるようになる
ゴムバンド(レジスタンスバンド)を使って体重の一部を補助する方法です。
やり方:
- バンドをバーにかける
- バンドに片足(または両膝)を乗せる
- バンドの弾力で補助されながら懸垂する
バンドの太さ(強度)を徐々に細くしていくことで、少しずつ補助を減らして自力で上がる力を鍛えていきます。補助が減っていく感覚がモチベーションになるので、成長を実感しやすい練習法です。
ジムにアシストマシン(グラビトロン)がある場合は、そちらを使っても同じ効果が得られます。

ステップ5:逆手懸垂(チンアップ)からスタート
逆手(手のひらが自分を向く)で行う懸垂(チンアップ)は、順手懸垂(プルアップ)よりも簡単です。
理由は、逆手だと上腕二頭筋の関与が大きくなるからです。背中+二頭筋の合わせ技で体を引き上げられるため、成功率が高くなります。
まずは逆手懸垂からスタートして、できるようになったら順手に切り替えるのがおすすめの進め方です。逆手から始めるのは「楽をしている」わけではなく、確実にステップアップするための賢い戦略です。
補助トレーニング
懸垂の直接練習に加えて、以下のトレーニングで関連する筋肉を鍛えると攻略が早まります。
ラットプルダウン(ジム)
懸垂と同じ動作をマシンでできます。自分の体重より軽い重量から始められるので、懸垂に必要な筋力を段階的に鍛えられます。
目標重量:自分の体重の70%以上をラットプルダウンで引けるようになれば、懸垂1回ができる可能性が高いです。
ダンベルロウ(自宅)
広背筋を鍛える基本種目です。懸垂に必要な「引く力」を鍛えるのに効果的です。
バイセプスカール
二頭筋を鍛えるカール系種目です。懸垂の「腕を曲げる」動作をサポートする筋力がつきます。
グリップ強化
握力が弱いとバーから手が離れてしまいます。ハンドグリッパーやデッドハングでグリップ力も鍛えましょう。
懸垂攻略の練習スケジュール
Phase 1:基礎作り(1〜2週目)
| 月 | 水 | 金 |
|---|---|---|
| デッドハング 3×限界 | 肩甲骨プル 3×8 | デッドハング 3×限界 |
| ラットプルダウン 3×12 | ダンベルロウ 3×10 | ラットプルダウン 3×12 |
Phase 2:ネガティブ練習(3〜4週目)
| 月 | 水 | 金 |
|---|---|---|
| ネガティブ懸垂 3×3 | バンドアシスト懸垂 3×5 | ネガティブ懸垂 3×4 |
| ラットプルダウン 3×10 | ダンベルロウ 3×10 | ラットプルダウン 3×10 |
Phase 3:実戦(5〜6週目)
| 月 | 水 | 金 |
|---|---|---|
| 懸垂チャレンジ(まず1回) | バンドアシスト 3×6 | 懸垂チャレンジ+ネガティブ |
| ネガティブ懸垂 3×5 | ラットプルダウン 3×8 | バンドアシスト 3×5 |

体重を減らすのも有効な戦略
懸垂は自分の体重を持ち上げる種目なので、体重が軽いほど有利です。
体重90kgの方と65kgの方では、同じ筋力でも懸垂の難易度がまったく異なります。もし体脂肪率が高い(20%以上)場合は、食事管理で体脂肪を落としながら筋力をつけるのが最も効率的なアプローチです。
ただし極端な食事制限は筋力の低下につながるので、タンパク質をしっかり摂りながらカロリーを少しずつ減らす方法がおすすめです。
懸垂1回達成後のステップアップ
1回できるようになったら、以下のように段階的に回数を増やしていきましょう。
- 1回×5セット(インターバル2〜3分)
- 2回×4セット
- 3回×3セット
- 5回×3セット
- 8回×3セット(ここまで来たら中級者です)
懸垂が1回から5回に増えるまでが一番時間がかかります。ここを乗り越えると、その後の伸びは比較的スムーズです。粘り強くコツコツ続けていきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 懸垂ができるようになるまでどのくらいかかる?
A. 個人差がありますが、上記のロードマップに沿って週3回練習すれば、4〜8週間で1回クリアできる方が多いです。焦らず続けることが大切です。
Q. 家に懸垂バーがない場合はどうすればいい?
A. ドアフレームに取り付けるタイプの懸垂バー(2,000〜4,000円程度)がおすすめです。公園の鉄棒も活用できます。
Q. 女性でも懸垂はできるようになる?
A. はい、可能です。ただし男性より時間がかかる傾向にあります。ネガティブ懸垂とバンドアシストをしっかり取り組めば、確実に近づいていけます。
Q. 体重が重い場合は不利?
A. 体重が重いほど難易度は上がります。食事管理で体脂肪を落としつつ筋力をつけるアプローチが効果的です。
Q. 毎日練習しても大丈夫?
A. 毎日はおすすめしません。筋肉の回復には48〜72時間必要です。週3回のペースで、しっかり休息日を挟むのがベストです。
Q. 順手と逆手、どちらが正しい懸垂?
A. どちらも正しい懸垂です。順手(プルアップ)は広背筋メイン、逆手(チンアップ)は二頭筋の関与が大きくなります。初心者は逆手から始めるのがおすすめです。
まとめ
- ぶら下がり(デッドハング)で握力と基礎筋力をつける
- ネガティブ懸垂が最も効果的な練習法
- バンドアシストで補助しながら動作を覚える
- 逆手から始めると成功しやすい
- ラットプルダウンなどの補助トレーニングも並行して行う
- 体脂肪を落とすのも有効な戦略
懸垂は「できるかできないか」がハッキリする種目だからこそ、初めてできた時の達成感は格別です。その瞬間を目指して、コツコツ練習を続けていきましょう。

安全なトレーニングの基本は厚生労働省e-ヘルスネットで確認できます。肩や肘に痛みがある場合は日本整形外科学会のサイトで対処法をチェックしてください。
※記事執筆時点の情報です。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。

